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ものづくり企業が好きだ!

会社員時代、メインクライアントが大手自動車メーカーだったため、ものづくりの現場にお邪魔して取材することが多々ありました。

守秘義務契約を交わして、これから発売される新製品の開発現場に潜り込み、開発責任者にお話を聞いたり、現場の苦悩をかいまみたり。モノと向き合い、汗をかいている技術者の姿が本当にカッコよく、毎回取材が楽しみで仕方ありませんでした。

山口県に来てしばらく、そのウズウズが溜まってきた頃、以前周防大島の本を作らせてもらった広島の出版社から、「西井製作所さんの仕事をしませんか?」と声がかかりました。
聞けば1918年創業で、広島を代表する100年企業。航空機部品をも手がける金属加工のエキスパートカンパニーとのこと。「やります!」以外に何を言うことがありましょう。

ミッションは、「なぜ西井製作所が100年続く企業となりえたのか」、その「歴史」と「受け継がれてきた技術」、何より「込められた思い」を従業員にわかりやすく届けること。

資料を読み込み、企画を練り上げ、西井製作所さんに提案したのは「漫画本」でした。いくら歴史と技術の変遷を丁寧に言葉で紡いでも、企業存続の根幹部分、「思い(心の機微)」は伝わりにくいと思ったからです。

「思い」を伝えられたかは、読者(主に西井製作所の従業員の皆さん)の判断に委ねるとして、その制作過程は本当に楽しいものでした。

社長の西井裕昭さんに聞き取りインタビューすること30時間超。ユーモアと情熱に溢れ、笑いあり涙あり。あっという間に時間が過ぎて行きました。
ほか、当時を知るご親族・従業員への周辺取材、わざわざ取り寄せてもらった資料やご家族が所持していた古い写真などなど、西井製作所の100年間を約半年かけて徹底的に洗い出しました。
そこから原作を書き始め、漫画家さんに順次トスし、描いてもらうこと半年。ようやく終わりが見えてきました。
さあ、いよいよデザインに落とし込んで印刷へという段階で、予想もしない出来事が起こります。

新型コロナウイルスによるパンデミックです。西井さんも例に漏れず、大打撃を受けます。

ここまで制作してきて、タイトルは『ぼくらは何のために働くのか』で固まっていました。
西井製作所の100年は想像を絶するほど激動で、広島ならではの原爆投下を経験し、その後も何度も何度も潰れかけています。それでも技術力を武器にその苦難を乗り越えてきました。
それを丸一年かけて描いてきたのに、コロナに直面するまで実感できてなかったんです。危機というものがどういうことなのか、根っこの所で。

急遽もう一章を付け加えることにし、終わり方を変更。タイトルを『次の100年をつくる君たちへ』に変更しました。
「何のために働くのか」の答えを用意するのではなく、これまでの100年から「何を受け継いでいくのか」を読者(従業員の皆さん)に委ねようと思ったからです。

時代とともに置かれている状況、求められる技術やスキル、そして直面する危機のカタチが変わる中で、決まった型に捕われず、柔軟に変化していくことが最も大切じゃないかと思ったから。これまでの西井製作所の強みもまさしくそこにあると気付かされたからです。

西井裕昭社長に依頼していた「終わりに」の原稿が届いたとき、「ああ、これで良かったんだ」と安堵するとともに、老舗ものづくり企業の覚悟と未来の託し方に感銘を受け、ちょっと泣きました。

以下に全文引用します。

「次の百年をつくる君たちへ」

この漫画は、今の時代を共に過ごしている社員という仲間と、これから入社をしてくるまだ見ぬ仲間のために作りました。
漫画を作っている最中、新型コロナウイルスが発生し、世界中が恐怖で覆われています。
ですが、我々の過去を振り返っても、危機の連続でした。
困難な時代は必ずやって来るものなのです。

人の命には限りがあります。
しかし、企業は永遠に生き続けることができます。

永続する力は、危機を乗り越える力と言っても良いでしょう。
自らが課題を見出し、自らが解決方法を考え、自らが行動する力、そして、仲間と共に未来をつくり上げるリーダーシップ。
荒波を乗り越えた数だけ、社員は逞しさを増してきました。

世の中に感謝される製品を提供できる会社であり続ける。
社員が人生の勝利者になれる会社であり続ける。
永続する会社であり続ける。

そのために、我々が経験をしてきた歴史をまとめました。

あなたが、これまでの歴史に、これからの歴史を加えていって下さい。
その先に、より逞しく、優しさを兼ね備えた企業が出来るのだと信じています。

未来のみんなは、仕事を楽しんでいますか?
人生を楽しんでいますか?

私たちは、今の時代を生きる先祖代表として未来づくりを楽しみます。

二〇二〇年十月吉日
株式会社西井製作所 代表取締役社長
西井裕昭

この際、声を大にして言いたい。
ものづくり企業が好きだ!好きだ!!大好きだーーー!!!

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