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初めて「束見本」を手にした時のこと

「あ、この仕事ってすごい!」と感動した時の話を少しさせてください。今となってはちょっと気恥ずかしいくらいですが、初投稿ということもあり、青臭くいきます。たぶん、今もなお、その時に感じたことがこの仕事を続ける原動力になっていると思うので。

かれこれ16〜17年くらい前になると思うんですが、印刷会社から「束見本(つかみほん)」なるものが届きました。出版・広告業界では当たり前の存在で、ページものを作るときは、たいてい作ってもらいます。

全ページ真っ白な状態の、紙のたば。
使用する紙やページ数などの印刷仕様を指定して、「本の束(厚み)」がどれくらいになるのかを確認する「製本サンプル」です。

これを、初めて手にした時のことです。

束見本を発注するのはページ数がほぼ固まった段階なので、コンテンツはほぼほぼ出来上がっています。というか、目下大詰め、絶賛格闘中です。頭の中には全ページのレイアウトが隅々まで入っています。

で、まずそれを手にした時、「真っ白じゃねえか!」と思ったんです。当たり前です。束見本とはそういうものなんだから。でも、まずそう思った。
次に、毎日寝る間も惜しんで血眼になってやっていることがコレになるんだーと思ったら、スーッと冷静になった。どこか清々しい気分で。

このページにあれがきて、ここがこうで、と思い描きながら、真っ白いページを捲ることしばらく、ふとスゲー!って思った。

思わず、「スゲー!」って言葉にしちゃったくらい。

白紙から物を作るってこーゆーことか!と。

何もしなければ、白紙は白紙のままです。
それが、目に見えない「こうしよう」からはじまって、長い歳月をかけて取材して、言葉にして、写真やイラストが入り、デザインが組まれて、目に見える形になる。
大げさでも何でもなく、「命を吹き込む」行為だと思った。

編集者、ライター、カメラマン、イラストレーター、デザイナー……それぞれの想念が真っ白い紙を埋め、他の誰かに思いを伝達するツールとなる。このことに思い至って、シャウトしちゃったわけです。

もっと言うなら、

「これがひょっとしたら50年後、100年後も残っているかもしれず、今この時代に生きていない人も手にする可能性があるんだな。いや、待てよ。そもそも人類はそうやって思いを繋いでシェアして、蓄積して、歴史を積み重ねてきたんじゃないか。曲がりにもその一端を担っているのか!」

で、「スゲー!」と昼間のオフィスで。
斜め前に座っていた上司がビクッとするぐらいの声で。

今でも「束見本」を見ると、このときの感動と上司のビクッが思い出されて、初心にかえると同時に気が引き締まります。

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